レッツ・ゴー・若大将

大きな大きな加山雄三のメロディー
久々に加山雄三のLPが東芝EMI-新田ディレクターの手によって企画されていると聞き、加山雄三ファンとして又、一ディレクターとして大きな興味をもって楽しみにしていた。そして大きな、大きなLP "海・その愛" が出来上った。「君といつまでも」に代表されるバラード、そして「夜空の星」「蒼い星くず」に代表されるHOTで情熱的なナンバーの精神が少しも変わることなく息ずいていることに感激した。最近特にメロディー・ラインがこまかく、16分音符が多用される中で、加山メロディーのスケールの大きさにはドキッ!とするし、清々しい、それでいて強烈なメロデイーがある。これこそ加山雄三の人間性であろう。私自身は加山雄三を個人的に全く知らないが、きっと海のにおいのする素晴らしい男性であり、気さくな兄貴の感じであろう。LP「海・その愛」のB面、最後のナンバー「海・その愛」を聴いた時、久しぶりに涙が出て来たことを記しておく。

湘南の海で育った加山雄三、そして寺内タケシは、今や古い古いつき合いだという。どちらも海のにおいがするし、当時の日本のPOPSが現在、"湘南ポップス" と呼ばれ、クローズ・アップされているが、両人ともある意味でこれらの日本のPOPSに、オリジナリティを芽ぶかせた重要なアーティストであろう。

当時加山雄三が東芝でレコードを吹き込み寺内タケシがキングレコードで活躍していたが、多くの加山雄三のヒット曲のレコードの中に寺内タケシが重要なギターを聴かせてくれている。寺内タケシの友情出演と言おうか、加山雄三のイメージの中に、当時寺内タケシ以外に弾けるギタリストがいなかったといっても過言ではないだろう。その後、寺内タケシは、ステージに於てもレコードに於ても、サマー・ポップスを弾く時は必らずといって良い程、加山ナンバーをレパートリーに入れて今日まで来ている。寺内タケシの持っている音楽方向性の中に加山メロディーは、少しの不自然さもなく入り込めるし、そのメロディーの中に心を注ぎ込ませるには寺内タケシのギターが最適なのではないかと思う。事実、改ためて今回のレコーディングにあたり、こんなにもスムーズに、加山メロディーと寺内タケシのギターが共鳴し、同化した事もめずらしかった。
 現在、音楽の流れとしては、リズムが複雑化し、メロデイーもこまかい音のつながりの中で計算しつくされたかの様に、かなり窮屈な感じでメイン・ストリームは流れているが、雄大な海を源として、且つ、計算づくでない素直な感情そのままのメロディーが、かつて受け入れられたのは当然だし、今再びクローズ・アップされ、当時を知らない若い人々が、感動をうけるのも当然なのだろう。そこには、海があり、夢があり、男があり、涙があり、大きな愛があるのだ。
 加山雄三、寺内タケシ、この二人の若大将に我々は今ふたたび大きな声援を送ろうではないか。制作担当・安藤賢次

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