ビート!ビート!ビート!第2集

 ベンチャーズのメンバーが、ブルー・ジーンズの“荒城の月”を聞き大変気に入り、ぜひレコーディングをしたいと言いました。琴をフィーチャーした寺内タケシの素晴しいアレンジが、彼らの東洋という夢をかきたてたのでしょう。
 ふとした所にオリジナリティが生れるように、知らず知らず足元に新しい芽がふき出してきているものです。2年間のブルー・ジーンズの充実がもはや新しい曲を生み、より広い世界に話しかけることによって、どんどん彼らのオリジナルを発表しています。このLPの中に2曲のオリジナルを含んでいますが、注目に値するだけの出来になっています。
 何しろベンチャーズの面々としても寺内タケシのあのダイナミックなテクニックとオリジナリティには相当驚いたとみえ、その後かなり仲良く音楽演奏に花を咲かせ兄弟の契りを結んだという話。お互いに認め合う所は認め合い、とにかく日本にも彼らのような仲間のいたことと、新しいポピュラーの生れつつあることを感じてくれたことでしょうね。
 数年前、ロカビリーというともすれば誤解を招く表現で輪入された日本のロックの出発点はともかくとして、その現在にいたってさえもロカビリーというイメージから脱し切れない現状のビート音楽に新しいメスを入れなければならない。その辺に外国から受け入れられるだけのポピュラー・ミュージックというものの孤立が考えられるようです。年々、その割合を見てもわかるこのようなポピュラーの孤立の傾向に見合わせて、新しい形のビート音楽の抬頭を見逃すことは出来ないでしょう。
 連想に頼ったり、過去にすがる印象として音楽をとらえないで、素直に心に直感としてさらにほ肉感として音楽を楽しむ方法を現代人的なカタルシスとして必要とされる。具象化された音楽がリズムという形をとって自律神経のような束縛された自由が逆に我々を感放してくれるかのように酔いしれる事の出来るものこそビート音楽と言えるでしょう。
 ロックの、さらには日本のポピュラー音楽の今後の先駆者として寺内タケシとブルー・ジーンズが新しい道を築き上げ、若い人達のアイドルとしての責任を果してゆくことを課題として今年もまた大活躍してゆくことでしょう。
 流れてゆく時代にもまれながらも、日毎に敏感にそこに何が必要かを常にキャッチして創造する態度こそ彼らの今日ここまで成長することの出来たものだと言えるでしょう。
 日本に我々の手で創り上げたオリジナルポピュラーを世界の若者達に認めさせる日を期待しましょう。
寺内タケシ ギター・編曲担当
加瀬邦彦 ギター
市山正英 ギター
石橋志郎 ベース
鈴木八郎 エレクトーン
工藤文雄 ドラムス

★第1面
1. ダイアモンド・ヘッド
 ベンチャーズの最新のヒットですが、このLPのタイトルになっている通り、今年の春から夏にかけ大ヒットとなりそうですね。波に奏でられる南の国の優雅なムードがエキゾチックな夢に誘ってくれます。寺内タケシの名演奏がハワイの雄大な風景画を色彩豊かな素晴らしいタッチで聞かせています。これは余談ですが波の音はエレクトーンの鈴木八郎担当。種々のテクニックを駆使してギターならではの限界をいっている音のオブジェが大変面白いですね。
2. 10番街の殺人
 ベンチャーズの最近のロング・ヒットとなっているこの曲、作られたのは実に古く、ミュージカル作曲家リチャード・ロジャースがローレンツ・ハートの力を得て1936年に発表したブロードウェイ・ミュージカル“On Your Toes”に紹介された曲ですが、この寺内タケシのアレンジの方はいかがですか。スリラーもどきなイントロに始まって軽快なすばらしいメロディーをうまく生かしていますね。
3. 500マイル
 ピーター、ポール・アンド・マリーやキングストン・トリオのヒットで知られていますこのフォークソングはボビー・ベアーが最初にヒットさせた曲ですが、C&W出身の寺内としては存分にこの曲の魅力を分析して、ナマのギターとエレキ・ギターとの美しい調和を作り出しています。激しいロックやサーフィンものばかりでなく、こういった傾向のギターのムードを表現するあたりちょっとにくい感じですね。
4. キープ・サーチン
 “悲しき街角”等の一連の街角シリーズで知られているデル・シャノンの久々のヒットですね。デル・シャノンの自作・自演の曲ですが、最近のリバプール・スタイルのアレンジでぐんぐんのしてきている曲です。歯切れの良いギターのかけ合いがここでもみごとに生かされていますね。
5. 赤い砂漠
 映画のテーマから生れるヒット曲が数え切れない程の今日ですが、この曲もイタリア映画“赤い砂漠”のテーマ音楽です。まもなく封切られるこの映画は、ミケランジェロ・アントニオーニの初めてのカラー作品で彼の奥方でもあるモニカ・ヴィッティ主演ですから御期待下さい。アントニオーニの“太陽はひとりぼっち”等の一連の作品で息の合った音楽を聞かせてくれるジョパンニ・フスコの曲になるこのテーマもまたヒット間違いなしといえますね。
6. ブルー・ジーンNo.1
 ブルー・ジーンズの人気者、加瀬邦彦の作曲によってお送りしますこの曲、ブルー・ジーンズの作品第1番というところ。日本で初めて生れたサーフィン無国籍曲、ダイナミックな寺内のアレンジのバック・アップによってごきげんな曲になりました。彼、加瀬君としては、レコード大賞作曲家賞受賞の宮川泰氏の1番弟子として目下腕をみがき若さにまかせて書きまくっています。プレイの面とともに、今後が期待されています。
★第2面
1. 007/ゴールドフィンガー
 ジェームス・ボンドでおなじみの“007シリーズ”の第三弾“ゴールドフィンガー”の主題曲です。英国秘密情報局員ジェームス・ボンドに扮するご存知ショーン・コネリーがゴールドフィンガーという怪人物を相手にイギリス、アメリカ、スイスをまたにかけ大活躍!映画もいつも最高ですが、“ロシアより愛をこめて”のような名曲が生れてくれることに期待しましょう。
2. ハート・オブ・ストーン
 最近大あばれしているローリング・ストーンズの最新のヒット。かなり荒っぽいフィーリングのリズム&ブルースでビートルズの向うを張ってヨーロッパばかりでなくアメリカにおいても大変な活躍をみせ、リズム&ブルース・ブームに乗って人気上昇中の彼らですが、日本でもぼちぼち認められてきました。彼ら程黒っぽくないがチャック・ベリー系のギター・フィチュアを得意とするブルー・ジーンズのアレンジをお聞き下さい。
3. パイプ・ライン
 ブルー・ジーンズもこの曲を演奏しはじめてからもはや2年半。彼らの成長と共に歩んできたなつかしい曲です。ベンチャーズのヒットで知られていますが、シャーマンとスティッカードのコンビによる作曲でシャンティズのものがオリジナルです。ブルー・ジーンズとしてもこの曲のレコーディングは数回にわたっていますが、今回はエコー・サウンドをうまく生かし少し変ったムードを出しています。
4. アパッチ
 ザ・サファリーズ等によってここ数年間ヒットしていますこの曲、アメリカで生れた感じですが、メロディーはスウェーデンのギタリスト、ヨルデン・インゲルマンの作曲によるものだそうです。ブルー・ジーンズのレパートリーとしては決して新しくありませんが、レコーディングは初めてです。
5. ジャスト・シンク・オブ・トゥナイト
 映画俳優としてもご存知のジェームス・ダーレンが歌っている曲で、ジャック・ケラーによるオリジナルです。寺内タケシの派手なアレンジで楽しめます。
6. ミスター・カーペンター
 この曲も加瀬邦彦のオリジナルです。カーペンターと言えば大工のことですが、実はドラマーの工藤文雄君のニック・ネームなのです。彼は物を作ったり、発明したりすることが得意でバンドの大工仕事は一手に引受けてしまうことから生まれた名なのですが、カナヅチやカンナを使って大工する光景が眼に浮かぶほどユーモアにあふれた曲ですね。

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