レッツ・ゴー運命

 バニーズ・ファンがもっとも待ち望んでいた「クラシック」のエレキ化がついに完成しました。題して『レッツ・ゴー“運命”』、リーダー寺内タケシが1年間の準備期間を持ってじっくりと取り組み、現代の若人がもっとも期待し、またもっとも共感を持つスタイルの演奏に仕上げました。戦後の音楽教育は、メロディー、ハーモニー、リズムの三者に重点を置き、特にリズムを強調していますが、このLPでは、そのねらいを現代のリズムを中心として、若い人がもっともエキサイトする音色で演奏しました。これこそまさに現代に生きる若人の直感からくるクラシックの解釈であります。常に前進を目的として、新しいバニーズ・スタイルの完成に努力をつづけている寺内タケシ。そして自己のギターのテクニックの完成と、世界の寺内タケシとしての自信と自覚に目ざめる寺内タケシ。そういった意気ごみをこのLPから感じとることができます。LPを吹き込むたびに新しい音色を披露してまいりました彼が、今回も'68年のギター・サウンドといわれているバズ・トーン(Buzz-Tone)を開拓し、従来のエレキ・サウンドにはなかった重厚で刺激の多いサウンドを作り上げております。クラシックをエレキ・サウンドで取り上げてLPにしたのは世界中で寺内タケシが初めてです。この意欲をぜひとも買っていただいて、惜しみない拍手をしてあげて下さい。

〔第1面〕
1. 運 命
 もっとも有名なベートーヴェンのシンフォニーです。ここでは寺内タケシの目まぐるしいまでのテクニックが見せ場となっています。この曲に関しては一度テレビで演奏したところ大きな反響を呼び、そのレコード化が待ち望まれておりましたが、スケールの大きい難曲をみごとに弾きこなしております。
2. 白鳥の湖
 三大バレエ名曲の中でも、もっとも有名なチャイコフスキーの『白鳥の湖』を取り上げました。幻想的なイントロから、有名な旋律を井上正の尺八が美しく歌い上げます。クラシックを尺八が演奏するのは恐らくこれが初めてのことでしょうが、哀感のこもった音色がみごとに白鳥を浮き彫りにしています。
3. ペルシャの市場にて
 ケテルビーのポピュラー名曲として、ホーム・ミュージックとして、非常にポピュラーになっていますが、ここでは異国情緒豊かに、ドラやオモチャのラッパが特別出演して、にぎやかな市場風景を描写しています。そして第2部では寺内タケシの美しいギター・ソロが活躍します。これだけ美しい音色は、ギターとアンプを完全にマスターしていて初めて完成できるものです。
4. 熊峰の飛行
 リムスキー・コルサコフが作曲した速いテンポの曲で、『バンブル・ブギー』というタイトルでポピュラー化され、ピアニストが好んで取り上げていますが、ここでは'68年のニュー・エレキ・サウンド、バズ・トーン(Buzz-Tone)を採用して、原曲以上のすさまじさを実現しました。寺内のバズ・トーンは日本で初めて使用したVOXのトーンで、想像を絶するものすごさで400立方メートルのスタジオはこの音色で満ちあふれました。
5. ショパンのノクターン
 エレキ・ギターで初めてショパンのノクターンを寺内タケシが弾きました。この曲は元来がピアノのための曲ですので、ギターの調弦に合わず、指づかいもむずかしく、特にソロですので一つのミスも認められないので、演奏に際しては非常に神経を使いました。3日間にわたる猛レッスンを経て、初めて完成したものです。
6. 剣の舞
 ハチャトゥリヤンの作曲になる現代音楽で、ジャズ化されてビッグ・バンド・ジャズとして好んで演奏されておりますが、ここではバニーズ6人でビッグ・バンド以上のダイナミックでスケールの大きい演奏を展開しております。リズムの歯切れの良さと重厚なサウンドは、寺内タケシとバニーズ独特のもの、これこそ「バニーズ・サウンド」と呼ぶにふさわしい演奏と申せましょう。
〔第2面〕
1. 未完成
 シューベルトの『未完成』がエレキ・サウンドになると、こんなに新しいものになります。
『運命』とならんでこのアルバムの白眉と申せるもので、原曲を巧みにアレンジして、寺内独特の火のでるようなアドリブがはいっております。編曲・演奏の良さはもちろんのこと、現代にマッチしたバニーズの音色が十二分に発揮されて、クラシック大曲に容易に溶けこむことができます。
2. ハンガリー舞曲第5番
 この曲では寺内タケシのギター・テクニックとバニーズのリズム感の良さを鑑賞していただきましょう。寺内タケシのギター・テクニックは幼いころからたたきこまれたクラシック・ギターが基礎となっており、それにエレキ・アンプの音色の操作と、持って生まれた鋭いリズム感が三者一体となって完成されたものです。
3. カルメン
 ビゼーの名高いオペラの中から『闘牛士の唄』を取り止げ、それに寺内タケシが書きおろしたセンチメンタルなメロディーを随所に加えて、ここに新しい『カルメン』が生まれました。「哀愁のカルメン』といったタイトルがピッタリするような演奏です。リズムの変化に伴ってギターの音色も変わり、その構成のおもしろさが聞く人を楽しませてくれます。
4. ドナウ川のさざなみ
 イバノビチ作曲のワルツの名曲です。ポップス・コンサートなどで皆さんもおなじみでしょう。ここでは井上正の尺八がメロディーをまず取って、のどかなドナウ川の情景を表現し、つづいて寺内タケシのギターが、バニーズ・ビートにのって軽快に弾きまくられます。
5. ある晴れた日に
 長崎を舞台にしたプッチーニのオペラ『蝶々夫人』から、もっとも有名なアリア『ある晴れた日に』を取り上げて、ロマンティックな演奏を展開します。ロマンチスト寺内タケシの人柄がにしみでるような、甘く感傷的なギター・ソロが聞きどころです。ここでは久し振りに特別注文の12弦ギターを使用し、マンドリン風のソロから、太い音色の低音ソロヘとはいってゆきます。
6. エリーゼのために
 ベートーヴェンのクラシック小品の中で、もっともポピュラーとなっている曲です。ここではバズ・トーンを取り入れて、ダイナミックな「エリーゼのために』となっており、ベートーヴェンもさぞびっくりしていることでしょう。

まあ、お読み下さい
<寺内タケシのことば>
原曲が名曲ぞろいなので、非常に神経を使いました。世の中が騒々しくなってきて、わたくしたちはクラシックを聞くチャンスがだんだん少なくなってきていますが、わたくしとしては初めてクラシックに取り組んで、若い人にいかに容易に受け入れてもらえるか苦心しました。わたくしとしては、これが「若い世代のクラシック音楽」だと思っています。

<バニーズ・メンバーのことば>
今回は寺内社長にこってっしぼられました。竹刀でたたかれたコブの一つ一つが、自分の音楽生活への貴重な体験であると、感謝しています。

<バンド・ボーイのことば>
アンプがだんだん大きくなるので、持ち運びに時間がかかって申しわけありません。ドラとオモチャのラッパはぼくたちがやりました。うまいでしょ!

<ディレクターのことば>
『正調寺内節』につぐ大作で、大いに張り切りました。寺内タケシとバニーズの熱心な音楽に対する態度には頭が下がります。「世界のバニーズ」への躍進を期待して、次の企画もきっと皆さんに喜んでいただけるものを用意いたします。

<ミキサーのことば>
ともかく音が大きいので、それをいかにそのままレコードに入れるかで苦心しました。今回もギター・アンプからの直接録音や、テープ・マシンの特殊操作による新しい吹き込み方法をやってみました。くわしいことはナイショです。

<レコード・セールスマンのことば>
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